第135回はニュースを取り上げます。
農業と福祉を組み合わせた「農福連携」で、高価な胡蝶蘭に着目し知的障害者らの経済的自立を支援する動きが福祉事業所から企業へと広がりを見せている。採用することで障害者雇用率が上がるうえ、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組む企業として投資家などの評価を高め、ブランドイメージも向上するからだ。一方で、障害者の自立に十分に結びついていない現状もある。
千葉県我孫子市郊外の温室に純白の花がずらりと並ぶ。帝人が障害者雇用を促進するために設立した特例子会社、帝人ソレイユが運営する農園「ポレポレファーム」で働く障害者が作業分担しながら丹精込めて育てた胡蝶蘭だ。見栄えをよくするため花の方向を整える「仕立て」という作業を任されているのは、昨年4月入社の廉谷貞治氏。1鉢に3本の花を寄せ植えする3本立てを仕上げるのに1年前は2時間超かかっていたが、今では1時間を切る。丁寧で仕事も早いことが認められ「最高技術者」として5本立てに挑戦する。 6年度には年間4000~5000鉢(3本立て換算)を栽培する計画で、企業の贈答用市場をターゲットに売り上げ1億5000万円を目指す。7年度には取引先企業を500社に増やし、営業黒字化を視野に入れる。そのためにポレポレ産のブランド化を図るとともに、帝人の鈴木純社長らによるトップセールスで顧客開拓を進める。 ポレポレは平成31年4月に障害者を採用して野菜栽培を始めたが経営的には苦しかった。そこで目をつけたのが胡蝶蘭。NPO法人AlonAlon(アロンアロン、同県いすみ市)が障害者の経済的自立という成果を出していることを知り教えを請うた。アロンアロンは、企業への就職が難しいとされる中度から重度の障害者が働いて収入を得る就労継続支援B型事業所(就B)を運営する。
農園「オーキッドガーデン」(同県富津市)で29年9月から胡蝶蘭栽培を開始し、品質が認められて取引先企業は2500を超えた。 那部智史理事長は「メンバー全員が働いているうちに胡蝶蘭栽培の職人に成長する。技術が認められて企業に就職したメンバーもいる」と話す。活躍の場を与えられた障害者の収入増(最高で月10万円)と就労機会の創出につながっている。 就Bで働く障害者は約30万人いるが、企業への就職率は1%といわれる。スタッフの支援を受けながら企業への就職を目指して仕事を覚える場であるにもかかわらず、実際は難しい。平均賃金も月1万6千円程度と低い。その理由として那部氏は「就Bは国から年3000億~4000億円の給付金を受けている。この金額は障害者の数に応じて決まるため、障害者を労働市場に出さず抱え込む事業所も少なくない。障害者の自立を妨げている」と憤る。一方で、アロンアロンの就労率は50%を誇る。同一敷地内で開始した貸農園を利用する企業が、オーキッドガーデンで働いていた障害者を採用した上で出向させて栽培する仕組みをつくったからだ。これによりメンバー20人のうち10人が就職した。現在は9社と契約しているが、来年3月には12社に増える予定だ。それだけ就労者は増え経済的自立につながる。企業は障害者雇用率を上げられる。
さらに一歩進んだのが、アロンアロンがプロデュースする形で自社農園で栽培を始めた帝人ソレイユだ。同社に続いて自社農園をつくる企業も出始めており、アロンアロンは胡蝶蘭栽培のプロデュースに注力し全国展開を図る考えだ。 しかし障害者雇用と事業の黒字化を両立させるのは簡単ではない。「大企業はSDGsの一環として特例子会社を設けるが、障害者を戦力化できていない」。厚生労働省障害者雇用対策課の小野寺徳子課長はこう指摘する。企業として農福連携に乗り出す以上、利益を出すことが大前提だ。しかし企業に義務付けられる障害者の雇用の割合を示す法定雇用率(2・3%)にこだわる余り、赤字覚悟で障害者確保に動くが、採用後の活用を考えていないケースも見受けられる。戦力として期待していないともいえる。 小野寺氏は「障害者の特性を見抜いて、能力や強みを生かす仕事を任せることが必要だが、力を存分に発揮できる仕事に就かせているのか疑問」という。これでは障害者の自立は心許ない。
元記事:https://www.sankei.com/article/20210820-2HDSOB5LSFI5DNXFTMEA5FOJQY/
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